トムヤムクン

お家に帰りたいのトムヤムクンのレビュー・感想・評価

お家に帰りたい(1989年製作の映画)
5.0
アラン・レネと聞くとマリエンバートを思い出して身構えてしまう名前ですが、こんな風刺とウィットに富んだコメディも世に送り出しているんですね。漫画家の父を持つエルシーは父の漫画が体現するような俗悪でブルジョワ的でキッチュなアメリカの文化を嫌って古き良きフランスの19世紀から20世紀前半の文学の世界に飛び込んでいきます…が、行きの飛行機でペーパーバックを読みながら文豪達に思いを馳せたり、部屋中にプルーストやサルトル,カミュの写真を貼ったりする趣味もやっぱりアメリカンな装飾趣味です。日本で90年代後半からゼロ年代にオタク文化論が流行ったのに先んじる形で、欧米でも低俗と見られていたポップカルチャーに目を向けて評価しようとする動きが60年代以降にあったわけですが、この映画において皮肉をこめて炙り出されているのは、論じる対象がポップな漫画であれ高尚な芸術であれ、何かについて自分はその価値を「わかってる」という振る舞いをすることで他人と自分を「趣味」のレベルで区別すること自体のアホらしさといったところでしょう。
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