このレビューはネタバレを含みます
ホワイトレディの恐怖。
イドリス・エルバ出演作品攻略の一環で視聴。
イドリス・エルバが演じるのは会社で幹部にまで上り詰めているデレク。
3年前に秘書だったシャロンと結婚し、子供が生まれて新しい家に引っ越す。
そんなとき、デレクはエレベーターで偶然乗り合わせた派遣社員のリサと言葉をかわす。
リサはデレクに強い執着を見せはじめる。
少し感想を書くのが難しい。
というのはリサの行動は妄想性障害からきているのだけれども、その描き方が正確かつ適正なものであるかどうかは知識の乏しい私にはわからない。
いったんシカゴの家族のもとに戻され、治療を受けることになったにもかかわらず、再び現れ、ああいう結末で描いたというのは、メンタルヘルスに問題があるとされる人たちの対処に困り警察を呼んだ結果射殺されてしまったというケースがアメリカで頻発していることを考えると、こうなったとき実際にはどうすればいいのかという正しい対処法を描いておいてくれた方がよかったのではないかと思ってしまう。
この映画を見終わっても、もし実際にデレクや彼の妻のシャロンのような立場になった時、どう対処すればいいのかわからないままだからだ。
もう一つ、感想を書くのが難しい理由があって、それがデレクの秘書がゲイとして描かれていることだ。
この人が元々デレクの電話を盗み聴く習慣があり、さらにリサと友人となりデレクの情報をダダもらすキャラクターとして描かれている。
話を進めるために誰かがデレクの情報を筒抜けさせる必要があるのはわかるが、それでもデレクがすでにリサに大変な目に遭わされ、いったん、リサが会社をやめたということでひと段落ついたところでまた彼が安易にリサにデレクの情報をダダ漏れさせるというご都合ぶりで、物語を進める上でどうしても誰かがこの役割を担わないといけなかったとして、それをゲイに設定した理由はなんなんだろう。シャロンがデレクの元秘書で秘書と恋に落ちやすいデレを心配してデレクの秘書が男性にしてほしいとお願いしていたから男性である必要があったとして、それから?
うーん。。。
アメリカで白人女性に黒人男性がストーカーされると、白人女性に白人男性がストーキングされるよりも恐ろしいことになる。
白人女性が黒人男性にレイプされたと偽ったために、なんの関係もない黒人の人たちが大量虐殺されたということがアメリカの歴史上何度も起こっていて、助けを求める声に駆け寄ってしまったがために逮捕されたり射殺されたりというケースも未だに事欠かないアメリカなので、それを踏まえてこの映画を見ると、もうとにかく恐ろしい。
つまり、いつ何時でもデレクの方が圧倒的不利な立場にあるので、人目につくところでリサがデレクに迫ってくるシーンなどはハラハラし通しだった。リサでなくとも周りの誰かが通報すればデレクが逮捕されるか下手すれば殺される可能性が大だからだ。
この映画には迂闊すぎる人物がもう1人いてそれがベビーシッターの女性なのだが、これまた雇い主であるシャロンに直接確認せずにリサを家に招き入れるシーンがある。
ついでに言えばシャロンも迂闊組で、あんなに怖い目に遭っているのに、出かけるのに警報装置のスイッチを入れ忘れたりする。
まぁ、それは彼女がそのためにリサがすでに侵入している家に戻るためなのだけれども。
最後はシャロンとリサの直接対決となり、シャロンは「クレイジー・ビッチぶりなら私の方が上よ」とリサと戦い、ぶん殴る。
ここはまぁ、これまで集積されてきたホワイトウーマンの恐ろしさぶりを踏まえてみれば、多くのブラックウーマンにとっては間違いなく、なかなか胸がすく場面ではあるんだけど...
それにしてもデレクはある意味運が良かったとも言える。最終的に社会的地位を奪われることも家庭を失うこともなかったからだ。
しかし、誰も見ていない場面で2人きりになるということは誰も証言してくれる人がいないということで。
もしもリサがデレクを陥れる意図を持って接近したのであれば、簡単にデレクは破滅させられていたと思う。
そうならないためにはどうすればいいのか、ほんとうに難しい。
偽りであるなら簡単に落とし入れられるのに、実際にレイプ被害にあった場合は被害者に「スキがあった」だの責められるし、立件するのも難しければ裁判でも再度苦痛を味わう羽目になる。
うーん。
いやな映画だ。