明石です

八仙飯店之人肉饅頭の明石ですのレビュー・感想・評価

八仙飯店之人肉饅頭(1993年製作の映画)
5.0
「死体なら棄ててないさ。チャーシューにして肉まんの中に入れた。あんたらも食べたろう?」

80年代にマカオで起きた猟奇大量殺戮事件をベースにした実録スプラッター映画。人間の肉を肉まんに詰めて客に食べさせるという設定から、荒削りでグロテスクな『羊たちの沈黙』でしょう?くらいに思ってたけど、舐めてましたね。凄まじかった。香港のいわゆる「三級映画」だからこそ作り得た、ハリウッドでは絶対に製作不可能な最悪な作品(褒め言葉)でした。

ストーリーとしては、海岸に打ち上げられた人間の手足(!)を発見した警察が、捜査を進めるうちに1人の男に目星をつけ、彼を捕らえて拷問を加えたり薬物で自白を強要させたりした結果、男が口を割り、世にも恐ろしい猟奇殺人の全貌が明らかになる、というお話。

死体発見→犯人を拷問→事件の全容が発覚、と綺麗な三部構成なっていて、それぞれにしっかり見るべきところが用意されてるのが上手い。とくに前半のコミカルな雰囲気から段々と明るさに翳りが見え始め、中盤の公権力による(日本やアメリカなら、フィクションの中でさえ許されないような)数々の拷問を経て、最後は、まるで警察への復讐かのような「あんた達も食べたろう?」に繋がるラストは、最高にゾッとした。

なんと言っても本作の目玉は、主人公が子供5人を含む一家8人を皆殺しにする残虐を超えた最低最悪なスプラッター描写。泣き喚く子供を(5人も!)殺す映画なんて初めて見た、、切断された少女の首がごろりとテーブルから落ちるシーンには、なんだこれは!!という純粋な驚きに包まれる。こんな倫理的に完全アウトな映画、他ではちょっとお目にかかれないですね。切断された少年少女たちの真っ赤な手足が無造作に積み上がってくシーンも、それを調理して肉まんにしちゃうシーンも、ホラー映画の殿堂入りレベルだと思う。

前半から中盤にかけて、操作にあたる警察の態度が一貫して、コメディ映画よりもコミカルな描かれ方をしているだけに、後半の残虐シーンの畳み掛けに余計に凄惨さを感じてしまう。それが作り手の狙いなのかはわからないけど、まさかの恐怖のサンドイッチ方式には肝を冷やさずきないられない(前半のあの軽い感じから、後半の大量殺戮をどう想像できるでしょう?)。

そして主演俳優さんの「死体は肉まんの中に入れた。あんた達も食べたろ?」の演技は、あのアンソニー・ホプキンスさえ可愛く見えるほどのおぞましさで、それを聞いて一斉に嘔吐する刑事たちの演技まで含めて本気のトラウマシーンでした。中盤の拷問はラストの復讐に繋げるためにあったのか、、という良い意味でのカタルシスも得られる。香港ホラー、、恐るべし。

この1作で主演のアンソニー・ウォンのファンになっちゃった、、この人の映画はもっと見よう。本シリーズと『エボラ・シンドローム』だけじゃなくてね。
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