【第52回ベルリン映画祭 金熊賞】
『ユナイテッド93』などの名匠ポール・グリーングラス監督作品。アイルランド独立をめぐる「血の日曜日事件」をドキュメンタリックに描いた作品。ベルリン映画祭では『千と千尋の神隠し』と金熊賞を分け合った。
素晴らしい。キレのある演出と編集、ドキュメンタリーのようなリアルな感触のある傑作。
アイルランドの都市デリーでの行進が思わぬ惨事へと発展してしまうサスペンスなのだが、ドライな描き方がとにかく素晴らしい。
地方議員アイヴァン・クーパーの視点でIRAや同志たち、そして警察や政府との軋轢を見事に描いている。
映画としても文句のつけようのない傑作だが、これが実際に起こった事件であり、誰一人政府側は逮捕されたりしなかったという事実が怖い。軍の指揮者はこの後叙勲されたという字幕で唖然となる。
もちろんこの映画の視点が絶対に正しいとは限らないのだが、どう考えてもやりすぎているのは明らかなのに。終盤自作自演するシーンの差し込み方の見事さよ。流石グリーングラス。
永遠の傑作『千と千尋の神隠し』と同時受賞した本作、ハードルが勝手に上がっていたが、それを余裕で超えてくる傑作だった。