猫脳髄

吸血ゾンビの猫脳髄のレビュー・感想・評価

吸血ゾンビ(1966年製作の映画)
3.4
年末年始ユーロ・ゾンビ特集2/7~イギリス編①

ハマー・フィルム謹製、テレンス・フィッシャーと並ぶ後期モンスター作品の看板監督となったジョン・ギリングによるプレ・ロメロ時代のゾンビ映画。ロメロ以前のゾンビの多くはヒールにブードゥー魔術や薬物によって使役される奴隷として描写されるため、本作でも必然的にゾンビ発生の原因となる人物が登場し、主人公らと対決する構図になる。

19世紀後半の英国。ロンドン大学の医学教授役のアンドレ・モレルが、謎の疫病を調査するため、娘を伴い、教え子が開業する辺境を訪れる。医療の無力さに苛立つ住民のプレッシャーにさらされるなか、教え子の妻も病の兆候を見せる。何者かに誘い出されるかのようにさまよい出た妻を追う教授の娘は、鉱山の跡地で先日死んだはずの住民の姿を目撃する…という筋書き。

本作の最大の特徴は、登場人物の夢の中という状況ではあるが、映画史上初めてゾンビが土中から出現する点である。また、本作のゾンビは死体が乾燥する体で白っぽく変色している。角膜も白変するため、いわゆる「目が点」状態である。邦題には「吸血」とあるが、実際はそのような描写はない。合わせて、死者がゾンビ化するプロセスを克明に映し出しており、なかなかキュートな教え子の妻、ジャクリーン・ピアースがゾンビ化後に斬首されるゴア表現まで盛り込んだ。

さらに謎解きあり、活劇ありとハマーらしい構成でつくりも手堅い。逸脱はないが、ハマーはこれでいいのである。
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