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子連れ狼 冥府魔道の教授のレビュー・感想・評価

子連れ狼 冥府魔道(1973年製作の映画)
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「子連れ狼」シリーズの5作目。
子供の頃に凄く好きだった印象があったが、観返すと大味なストーリーラインが意外に乗れなくて、面白いんだけど内容がわからない、という感慨があった。
そもそも通好みの、よくわからない「カルト性」とは、すなわち「雑味」にあって、完璧を志向した物語構成では、その面白みは生まれない。

というわけで、本作は正直に言って全般的にはストーリー上では「雑」と言える。
特に、盗人である「早変わりのお葉」(佐藤友美)と大五郎のエピソードは本筋とまるで関係がない割に、それなりに尺を割いている。そのくせ「見せ場」になっている妙味が本シリーズの不思議な魅力。

一方で「黒田藩」の「お家騒動」に巻き込まれる形になる拝一刀(若山富三郎)だが、一見すると、些細な状況がわかりづらい。100両ずつ今回のミッションを説明しては斬られるの「ループ」も唖然とするし、敵や目的が誰やら?と悶々としているうちに毎度の宿敵「裏柳生」と柳生烈堂(大木実)との乱戦に突入する。

本シリーズの醍醐味や、面白さはこのスピード感に溢れた殺陣や、アクションシーン。グロテスクなスプラッタシーン。本作は珍しく「お色気」は皆無だが、改めて「時代劇」というのはジャンルフリーであらゆる世界観を好き放題に投入できるジャンルであることを痛感する。

本流のアメリカ製西部劇が、ある意味でのアメリカ映画の源流であるように、それを黒澤明が「時代劇」で再現したように、本シリーズや「座頭市」シリーズなどは「マカロニ・ウェスタン」的や野卑なヒーロー世界をトレースしていることが、現在にも脈々と連なっていることを感じると実に感動的。

アクション映画の源流のひとつとして、カルトな人気を持つ理由はよくわかる。
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