マヒロ

アリス・スウィート・アリスのマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
年頃の娘アリスは悪戯を繰り返して周囲の大人に怒られてばかりで、反対に素直で周りの人から好かれる妹のカレンに嫉妬し度々嫌がらせを繰り返していた。そんな中、カレンの初聖体の日に悲惨な事件が起き、その時の物的証拠からアリスが殺人事件の犯人として疑われる……というお話。

アメリカ産のスラッシャーホラーだが、殺人鬼の不気味な出立ちや偏執的な暴力描写などイタリアのジャーロ映画や『赤い影』なんかのヨーロッパ製ホラーを参考にしていると思われるっぽい描写が所々にあり、両者の魅力が混ざり合った不思議な存在感の映画になっている。

幼い子供であるアリスが本当に殺人を犯したのか……というところを争点に話が進んでいくが、明確な主人公と言える存在がおらず流動的に視点が変わっていくのでなかなか先が読めない。元々サイコっぽい性格のアリスが怪しいのはもちろん、周りの人物も大概変な人だらけで、マンションの大家で猫を多頭飼いする巨漢のおっさんや、ヒステリックでアリスを敵視する伯母、意味ありげな態度を取り続ける神父など、なんか腹に一物抱えてそうな奴らが多く、誰もが犯人であってもおかしくないという状況が面白かった。

途中で犯人の正体と目的は明らかになるが、前述の通り誰もが怪しく拠り所のない気持ち悪さが面白かったので、それがなくなってしまうとちょっとパワーダウンしてしまう。犯人が分かった上でのサスペンス展開も用意されているのでそれはそれで良いんだけど、もうちょっとこの珍妙さを味わっていたかったかなーと思ってしまった。

(2023.161)
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