TaiRa

愛されし者のTaiRaのレビュー・感想・評価

愛されし者(1998年製作の映画)
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トニ・モリスンの大長編小説を上手くまとめた脚色だがそれでも3時間。非常に変わった映画。

黒人奴隷と幽霊とファンタジーが混在する不思議な物語。オプラ・ウィンフリーが主演と製作も兼ねている。ジョナサン・デミとしてはここから10年くらい迷走とも取れる変な映画を続けて撮っていく感じ。農場から脱走して来た黒人奴隷の女性セテとその娘デンヴァーの物語。彼女らの住む家には霊が住み着いていて、セテはそれを死んだ娘(長女)の霊だという。農場で奴隷仲間だった男ポールDと十数年ぶりに再会し、彼のおかげで霊は消えるが、その後謎の若い女ビラヴドがやって来る。どうやらビラヴドはセテの死んだ娘の様である。セテは追って来た奴隷主に娘を取られまいとして自ら娘を殺した過去を持っている。ちなみにこの逃亡奴隷の子殺しは19世紀に実際に起きた事件らしい。映画の前半はどんな話か先も見えず戸惑う。幽霊の存在を表現するのに真っ赤なライトが部屋を照らすのは、デミが前作『フィラデルフィア』でやっていた不思議な照明演出の応用。過去が明らかになって行く過程で映画のテンションも乗って行き音楽や撮影も良くなる印象。義母ベビー・サッグスが森で開いた集会を回想する場面、輪になった人々が踊りながら回っているのを輪の外側から逆回りに移動し撮影して行く映像が良い。回想場面は使うフィルムも特殊だった。回想の中の人物と現在の人物の視線が合う時空を超えた切り返しが好き。セテとポールDの一時的な幸福の瞬間やデンヴァーの前に死んだベビー・サッグスが出て来て慰めてくれるシーンも良い。ビラヴドのタンディ・ニュートンは色々頑張ってた。
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