工藤蘭丸

ルートヴィヒ 完全復元版の工藤蘭丸のネタバレレビュー・内容・結末

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1980年の日本初公開時は『ルートヴィヒ/神々の黄昏』というタイトルで、上映時間は184分だったようですね。当時はヴィスコンティブームの頂点で、昨年閉館してしまった岩波ホールが満員になる大盛況。私は近眼だったんだけど、一番後ろの方の席しか取れなくて、字幕がぼやけてはっきり読めなかった思い出があります。それをきっかけに、メガネを買って掛けるようになったものでしたね。

そんなわけで、昔観た時はストーリーもあんまり良く分からなかったものだったけど、たとえ字幕が読めたとしても、当時の私の知識量では十分に理解できたかどうか分からなかったかも知れませんね。

バイエルン王ルートヴィヒ2世の即位から退位までを描いた伝記映画だけど、最近世界史の勉強をしていたおかげで、だいたいの時代背景も頭に入っていたし、ワーグナーのオペラやバイロイト祝祭劇場などについても、20年ぐらい前に放送大学の授業で習ったことがあったので、すんなり理解できました。神々の黄昏という副題の意味も、当時は全然分からなかったんだけど、単にワーグナーのオペラのタイトルから取られたものだったんですね。

狂王とも呼ばれたルートヴィヒ2世だったけど、戦争を嫌い芸術を愛した人柄は、むしろ称賛されても良かったのかな。どうやら周りの批判に耐えきれずに、放蕩生活を送るようになってしまったようで、悲運な孤高の人だったのかも知れませんね。莫大な費用を掛けて作られた劇場や城も、今や立派な観光資源として利益を生み出しているし、やはり狂っていたのは王ではなく周りの人々だったのかも知れません。

映画的には、豪華絢爛なセットやヘルムート・バーガーの演技などが身どころの作品で、部分的にはすごく見応えのあるシーンが多かったけど、やはりこの内容で4時間はちょっと長いかな。劇場で観ていればまた違ったかも知れないけど、テレビで観ているとなかなか集中力を維持するのは大変でした。ワーグナーの音楽はふんだんに使われていたけど、せっかくだからオペラの上演シーンなども入れて、もう少しメリハリを付けても良かったんじゃないのかな。

それから、これのオリジナルはドイツ語じゃないかと思うんだけど、わざわざイタリア語に吹き替えてあるのは、とてつもない違和感。口の動きと言葉が合っていないので、アップになると気になって仕方ありませんでした。これだけ史実に沿ってリアリティを追求している映画だし、少なくとも日本ではドイツ語バージョンで上映して欲しかったですね。

ゾフィー役のソニア・ペトローヴァは、アラン・ドロンの『高校教師』で生徒役をやった女優で、昔好きだった覚えもあるんだけど、エンドクレジットを見てようやく分かっただけで、顔は全然覚えてなかったなあ。ロミー・シュナイダーは、シューマンのピアノ曲をバックに馬に乗って登場して来たシーンが印象的でした。