チッコーネ

南から来た女のチッコーネのレビュー・感想・評価

南から来た女(2005年製作の映画)
4.0
原題の『心臓リフティング』に象徴されるように、老境に差し掛かった男性の回春がテーマ。
さほど捻りがなく、テレビドラマにありそうな『不倫もの』脚本なのに、90分強飽きずに鑑賞可能。
語り口のうまさやデティールに溢れるコメディ感覚、そして叙情に満ちた映像・編集・演出にときめく。
裏テーマに『言語を共有するスペインと南米の交流』が含まれているほか、大ヒット映画『卒業』から約40年、『映画で描かれる男女の恋愛』が一周して保守へ回帰していることを、苦い諦めと共に提示する。

本作を制作時、監督は60代で、半生を回帰するようなノスタルジアが作品の根底に漂う。
『南米のアルモドヴァル』と呼びたくなる洗練が、非常に心地よい。
新作が観たいけどもう亡くなってしまったようで…、すごく残念。

メインキャラは夫婦ともにスペイン人俳優を起用(『神経衰弱ギリギリの女たち』のマリア・バランコをキャスティング)。
イケオジに弱いヒロイン役を与えられた南米女優はブルネットが美しく、情熱と知性の共存を感じさせる…、女性やゲイの鑑賞者からも支持を勝ち得る、稀有な存在感が美事。