猫脳髄

ジェーン・バーキン in ヴェルヴェットの森の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.0
先ごろ亡くなったジェーン・バーキン主演、アンソニー・M・ドーソンことアントニオ・マルゲリーティ監督の怪奇風ジャッロ。セルジュ・ゲンズブールもいなせな刑事役で登場する。

夏休みに伯母親子が住むスコットランドの古城を訪れたバーキンが、一族にまつわる吸血鬼伝説と殺人事件に巻き込まれるという筋書き。狂人扱いされ幽閉同然のハンサムないとことのロマンスも絡み、正調怪奇モノの王道を標榜する。ジャッロではあるが、残酷表現は抑制的である。

やや話がズレるが、本作では猫が狂言回しとして登場し、「不吉な徴」として取り扱われる。ただ、猫の演出に成功している作品などこれまでほとんど見たことがない。まず本作の猫もフワフワでどう見てもかわいらしいし、不吉どころか登場のたびに和んでしまう。「猫に襲われる」シーンもフレーム外から投げ込まれているし、猫は逃げ惑うだけである。ルチオ・フルチ「恐怖!黒猫」(1980)はなかなかうまくやっているが、稀有な例外だった。

このほか、本作ではどう見てもゴリラの着ぐるみを「オランウータン」と言い張るなど、なかなか無理筋ところが散見される。職人監督ドーソンとしては凡庸な作品に過ぎない。
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