Bellissima

プレイタイムのBellissimaのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
4.5
『プレイタイム』@渋谷イメージフォーラム「ジャック・タチ映画祭」



きゃー最高!喜劇映画の歴史に特異な足跡を記したその革新的作業の数々、それは映画の枠やジャンルをはるかに超え孤高世界すら感じるタチの名作中の名作。



前半はガラス面を駆使し内と外の異なる世界が隣り合わせになっており、そこに見えているのに手の届かないもの(ドア開閉時に映り込むパリの名所)として映画マジックをタチならではのパントマイム世界で魅了します。このビル内に紛れ込んでのすったもんだによる画面設計や演出における緻密な強固さを感じさせこの世界を完成させる事だけに精魂使い果たしている。これを作り上げなければいけないんだという気迫 物を創造する事への「誠実な狂気」に私は正直じんわりと涙しましたね。ひとつひとつの小物の配置にすら視覚的創意に満ちていて革新的、この辺り今見ても震えが来るくらいホント狂ってる。コメディを見て泣くなんておかしな話ですが。。



前半も後半も音響的で途方もなく精緻な人の出入りで見せながら中心点のない世界それは正に終わりなき「円環の運動性」。ラストのロータリーでの車の連なりはメリーゴーラウンド、朝に始まり朝に終わる「回帰」、追うものと追われるものが画面で繰り返し「反復」される運動、物語上での円環性を示しています。前半の洗練されたスタイリッシュとうって変わり後半はレストランを舞台にどんどん混沌化する様などは映画がモダニズムを皮肉った社会的テーマ性を持ちすぎないようにするためにあえてぞんざいな態度をとっているのだと感じた。

仄かな愛の芽生えを如何様にもメローに仕立て上げれるのにそこには全く感心なしサラッと流してしまう。感情よりこの世界観を優先させることのみに焦点が与えられ物語の論理性はほとんど重要視されない。

映画が高尚なアートである必要はない。映画において重要なのは作者が存在せず、俳優もいない。そして、物語も主題さえもない見たままを表現し内面など関係ないのだ「何事も押し付けない映画」とはこれだと言いたげで素晴らしいではないか。(続く)
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