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プレイタイムのqpismのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
4.9
何だこのとんでもない映画は!初見だったけど映画館で観て大正解だった。やっぱり文明をコミカルに描いてはいるが、伝わって来るのは温かな人間愛…

前半はガラスを使った巨大なセットで大都会の奇妙さやすれ違いが描かれる。どんだけ計算され尽くされた緻密な世界なんだ…と慄きましたが、あくまでも淡々と過ぎていく。

そして狂気狂乱の大問題シーン!後半の!レストラン!個人的には今までの映画体験の中でもかなり上位に食い込んでくる驚きと喜びだった!
オープンしたてで内装も完成していないパニック状態のお店、大挙して押し寄せる客、崩壊するレストラン機能、朝まで踊り狂う客!その一部始終をこれでもか!ととことん見せられる。最初はニヤニヤ見ていた僕も、気づくと「ああ、このシーンが一生続けばいいのに!」と祈らずにはいられなかった。主人公2人の、あまりにさり気ない邂逅と、ダンスの多幸感たるや!

やがて街は朝を迎える。クラブで踊り明かした朝の倦怠感と外の眩しさ、楽し過ぎていつまでも余韻に浸って帰れない、あの感覚。そして訪れる一期一会の儚さ。最後、スカーフを買っていて間に合わないユロ伯父さんに観客はやきもきするんだけど、それこそが彼の人の良さ、都会での生き辛さを端的に表現していて切なく微笑ましい。

バスの窓から見えるパリ。夜になるジャンプカットでため息。ユロ伯父さんことジャックタチさん、あなたの映画に出会えたことは僕にとって人生の宝です。最高の映画をありがとう。
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