孤島で静かに暮らす画家とその妻が、奇妙な出来事を通して心の闇に陥っていく様を描いた作品。
芸術家でありながら納得のいく作品を生み出せない夫ユーハンと、彼を献身的に支えながらも夫の元恋人への嫉妬を隠せない妻アルマ。
夫の苦悩や妄想、過去の愛に日記を通してアルマが触れることから、現実とも空想とも判別しかねる幻惑的な世界に迷い込んでいく。
主観と客観、現実と妄想が入り混じり、人間の心の深淵に迫ろうとしている。
ラストにアルマが問いかけることがテーマなのだろう。
愛する人と同じものを見たくなり、そのせいで人が変わってしまう。
夫が芸術家としての苦悩のなかで辿った悪夢的旅路とも取れるし、嫉妬した妻による、夫はこんな幻覚を見たはずという押し付け的幻覚とも取れる。
モノクロの美しい撮影は見事で、まさに心の闇までを映している。