スギノイチ

泪橋のスギノイチのレビュー・感想・評価

泪橋(1983年製作の映画)
2.0
疲れた中年と不思議ちゃん美人の邂逅。
確かに同原作者かつ渡瀬恒彦主演の『時代屋の女房』に似ている。
『時代屋の女房』と違うのは、ヒロインのバックボーンが描かれているかそうでないか。
『時代屋の女房』の夏目雅子はどこまでも正体不明であり、徹底した渡瀬恒彦視点だからこそ、神秘性を保ったままドラマが展開されていた。
一方、『泪橋』のヒロインはがっつり過去が描かれる。ヤクザだの近親相姦だのそれはもうたっぷりと。
問題は、その過去がさほど渡瀬恒彦とのドラマに絡んでかない点だ。

瀬川新蔵や殿山泰司や原田芳雄のキャラは濃く、演技も良いし猥雑で生々しいサブストーリーも単体で観るとそれなりに面白いのだが、これも本質的には話に絡んでこない。
個々のエネルギーが全体の流れに対して傍流過ぎて、物語の推進に機能しないのだ。
原作は未読なので何とも言えないが、もしかして脚本に関わっている唐十郎の特色なのだろうか?
そういえば監督作『任侠外伝 玄界灘』も全く同じ欠陥を持っていた。
まあ「脇役」だって本来は個々の人生を生きているわけで、物語の歯車として存在してるわけじゃないし、リアルっちゃリアルだけど…
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