MikiMickle

ジョン・カーペンターの 要塞警察のMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.0
警部補になりたてのビショップは、分署長の代理としてロサンゼルスのある署の管理を一晩任される。
そこは、移転途中の、ほぼもぬけの殻の署。

そこにある男が助けを求めてくる。
ストリート・サンダーというギャングに娘を非道に殺され、復讐で一人ギャングを殺 したものの、奴らに追われて逃げ込んだのだ。

実はそのギャング、その日の未明に6人の仲間を警察に射殺され、警察への復讐を誓っていたのだった。

ビショップは、そこに偶然居合わせた、護送中のナポレオン・ウィルソンという囚人らと共に、迫り来るギャングと戦うのだ。

その、土曜日の夜を描いた作品。


ギャングたちが撃ってくるサイレンサーつきの銃。
音はほとんどしない中の蜂の巣状態。
この演出のうまさに脱帽。
割れる窓ガラス、飛び散る書類。
姿も見えず、増え続ける相手が何人いるのか、どこから狙っているのかわからない恐怖。
ギャングといっても謎が多すぎて、不気味。
さすがSFホラーのカーペンター監督だけあって、未知なるものの不気味さを描くのが本当にうまい。
無表情でアイスクリームを買う少女を射 殺 する姿は、全く人間味を感じられず、恐ろしい。
そして、窓などからわらわらと忍び込もうとするギャングたちが、まるで侵略者のエイリアンやゾンビみたいに見えてきてしまうのです。

一方、普通の銃で応戦する内部の人間は、きちんと人間味に溢れています。
それは、小さな演出でも描かれています。
コーヒーに砂糖ふたつとか。
この差がハッキリと分かれているから面白いのです。

そして、消音銃の為に誰にも気づいて貰えない。
外部との連絡も取れない。
出口もない、正に陸の孤島状態。
その中での息もつけないほどの緊張感。
素晴らしいです。


キャラクターも良いです。

特にクールな女性職員のリー‼
度胸が座っていて、冷静で動じない。
仲間の死に涙するものの、騒ぎ立てない。
トロンとした目。素敵です♪

「タバコはあるか?」と何度も尋ねるナポレオンの、クールで渋い感じ。ダークヒーローであり、かっこいいのです‼
彼とどんどん仲間意識が芽生えるビショップの人間臭さも良いです。

で、音楽家として自作品を多数担当しているカーペンターの、シンセの音楽もこの緊張感を増長させます。
そして、同じ曲が使われているのに、最後だけイメージが変わるのです‼
ここも痺れます‼

男臭い雰囲気のアクションながら、B級ホラー感もあり、人間の悪も描き、一方で善と人間臭さも描く。
やはりジョン・カーペンターは、やはり素晴らしい監督だなと。

今作、ロメロの『ナイトオブザリビングデッド』をオマージュしたものだそうです。納得。
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