がちゃん

下宿人のがちゃんのレビュー・感想・評価

下宿人(1926年製作の映画)
3.9
原題からもわかるように、1880年代にイギリスで起こった、
『切り裂きジャック事件』をモチーフにしたと思われる、
ヒッチコックのサスペンスです。

ロンドンの夜。
若くて金髪の巻き毛の女性が次々と惨殺される事件が起こる。

目撃証言によると、犯人は背が高く、
マフラーで口元を覆っているとのこと。

新聞を通じて事件は大々的に報道され、
ロンドンの街に恐怖が走る。

そんなロンドンの街で下宿を営む老夫婦。
二人には若くて美しい金髪の娘デイジーがいた。

その下宿に、目撃証言とそっくりな不気味な男が、
部屋を借りに来た。

あろうことかデイジーは、
この怪しげな男と恋に落ちてしまう。

そして、
また新たな殺人が・・・

と、いうわけで、サイレントですが、
やっぱりうまいなあと唸ってしまう。

観ている私たちは、
この怪しい男の様子を知っているから用心するが、登場人物たちはそんな妖しい行動を知らないので心許してしまう。

この男、壁にかかっている金髪の女性の肖像画を全部外せと命令したり、イライラしたように部屋の中を行ったり来たりする。

このシーン、ヒッチコックは男を透明ガラスの上を歩かせて、それを天井の証明が揺れる場面と合成して撮影したそうですが、
見事なシーンです。

ただでさえ怪しい男だから、この男が食事の時にバターナイフを握るだけでサスペンスが盛り上がる。
もちろん登場人物は普段通り。

男がこっそりと夜に外出する場面での、
回り階段の俯瞰撮影も見事です。
階段の手すりと手。
どのカットも計算しきっている。

男は手錠をかけられたまま逃亡するが、
それを見つけた市民たちが男に襲い掛かる。
男は手錠が柵の上に引っ掛かり宙づりに。
ここに市民の暴力が襲い掛かるのだ。

結末は決して言えませんが、
極上のサスペンスを堪能しました。

がちゃん

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