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ザ・リッパーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ザ・リッパー(1982年製作の映画)
3.6
ドナルドダックの声優できるんじゃないかってくらいアヒルのモノマネがうますぎる殺人鬼が美女の腹を切り裂いて次々に殺していくルチオフルチ監督によるジャーロ。

エロと残虐に全力を尽くしたような見世物感溢れる作風ながらも、オシャレな映像で全編固めてくるから面白かったです。ロケ地がマンハッタンなのにイタリアを舞台としている時のような空気感を醸し出せるのが凄い!

反復により正常を観客に意識させることで、異常へと転落する落差を際立たせる冒頭の演出からうまさを滲ませてるのがさすが。その後も車中のフロントグラス越しに標的を捉え続けるカメラ、密室へと追い込む舞台づくりをしつつもそれと同時に笑いも誘ってくるアホらしさ。そして後一歩で脱出できない不完全な密室が絶望をより一層際立たせている。

赤い通路に緑の部屋。ドア下から入り込む赤い照明。誰もいない広大な地下通路。白い壁と赤い扉のホテル内装等、とにかく映像がオシャレ。セックス見ながらオナニーし始める女とか、セックスの音声を録音したテープを大量にコレクションしてるオッサンとか、テーブルの下で足を伸ばして向かい側の女の股間をいじりまくる自称「銀の足」の男とか、アホみたいな変態要素がてんこ盛りなんだけど、オシャレな映像のおかげで下劣な感じが全くしないのがイタリア映画の良いところですね。

明らかに怪しい風貌の犯人らしき人物を序盤から登場させ、主人公の老練刑事と頭脳派な心理学者のバディがそいつに迫って行くようなサスペンス的展開をしつつも、プロファイリングにより徐々に出来上がっていく「犯人像」との乖離からどんどんと犯人を撹乱させていく。その後も複数パターンに均等に説得力を持たせつつも、新しい事実と謎を積み上げていくことで最後まで真相をはぐらかす手法は流石にわざとらしくはあるんだけど、ミステリとして良く出来ていると思いました。

そしてそのわざとらしさがイタリア映画的というかジャーロ的な外連味を生み出していて、クライマックスの短時間で二転三転する展開をハラハラする見せ場として盛り上げていました。こういうところはイタリアホラーならではの楽しさですね。

フルチ監督はそんなに見てないのですが、しっかりとした正統派なジャーロで驚きました。もっと破茶滅茶な内容かと思ってたし、最後には彼方への門が開くんかな〜とか変な期待をしてしまいましたが、現実的な悲しさの漂う本作のラストも良かったです。ちなみに今回もお決まりの眼球責めがありました。突き刺しではなくて縦に真っ二つにしてましたけどね(笑)しかも一緒に乳首まで真っ二つにするという遊び心には笑いました(^_^;)
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