パイルD3

11:14のパイルD3のレビュー・感想・評価

11:14(2003年製作の映画)
4.5
◉ネット予約で明日の都内の空席を探索したら、「落下の解剖学」はスゴい混んでますね

みんな落下したいのかな?
それとも解剖したいのかな?
わたしは落下して見事着地がいいな

【お気に入りの一夜の出来事映画】②

「アフター・アワーズ」のように一夜の出来事を描いた映画で、チョッとお気に入りの拾いモノの2本目。
もちろんあっさりB級にラベリングされそうな作品ですが、ダークなクライムコメディとして完成度の高い一本です。

しかも一夜どころか、タイトルの11:14PMという時刻の前後20分に起こる、いろんな人々が絡んでくる奇っ怪なトラブルのドラマです。
ひとつ前に取り上げた「ジャッカー」同様、86分のコンパクトサイズの中に、よくもまあこんな人生模様を一気に詰め込んだもんだと、手際の良いシナリオに唸らされます。

人間交差点系映画で思い浮かぶのが、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の「アモーレス・ペロス」と「21グラム」、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「クラッシュ」、タランティーノ監督の「パルプフィクション」やブライアン・シンガー製作のオムニバスホラー「トリック・オア・トリート」等々…

時系列解体して自在構成されたこれらの作品は、複数の登場人物の行動と交差する姿をコラージュしながら、パズリングされた時制を一致させる伏線の巧妙さで見せます。

ゴチャつくスタイルなので、重々しいシリアスよりも、仕立てがコミカルな方が明らかにハマる気がします。
「11:14」の構成力とシナリオの巧さが、一切これらの作品に負けてはいないのは、明らかに滑稽に見える軽さがあるからだと思います。

監督グレッグ・マルクスはこの作品以外目立つものは今のところ無いのですが、27歳の時に撮った長編デビュー作にして、監督としての最高傑作と言えるかも…
ちょっとしたイライラ、ジリジリ、ピリピリが観ているこちらにもガンガン伝わってくる微妙な感覚の演出も、新人監督のものとは思えません。

そんな出来のいい脚本に目をつけたオスカー女優のヒラリー・スワンクが、プロデュースにも名乗りを上げたこともあり、自らも出演するほかパトリック・スウェイジ、バーバラ・ハーシー、ベン・フォスター、レイチェル・リー・クックそして大人になった「E.T.」のヘンリー・トーマスといったメジャー級の俳優たちが集められたようです

この当時のインディーズ作品では、異例の豪華キャスティングと言えますね


【映画「11:14」】

先ず、オープニングのタイトルが、60年代のアメリカ映画で見かけるようなアニメーション仕立てで、出演者やスタッフの名前を車に見立てて路上を走らせるというデザインがとてもオシャレ。

夜のハイウェイを走る一台の車が、11時14分に遭遇した事故に始まり、その後登場する車を絡ませたいくつかのアクシデントは、すべて、ちょっとした動揺と絶体絶命の焦りからくる軽挙妄動から生まれるのだが、そんな素人判断が引き金となるトラブルは、ウッカリ、チャッカリのレベルで、ある意味お間抜けに見えてしまう姿をサスペンスタッチで描いて行く。

そこから生まれ出た不遇、不運、衝撃をブラックな笑いの中で、時制をズラしながら見せるマルクス監督のトリッキーな技巧は冴え渡っている。

さて
果たして、何がどうしてどうなるか?いったい何が起こるのか?は、予備知識ゼロで見るべき作品なので、これ以上ストーリーには一切触れず、せめて登場人物をザッと並べておきましょう。

事の発端となる冒頭で夜道をドライブ中の男(ヘンリー・トーマス)、近所のおばちゃん(バーバラ・ハーシー)、その旦那(パトリック・スウェイジ)、色事に迷走中のセクシーな娘(レーチェル・リー・クック)、そのボーイフレンド(ブレイク・ヘロン)、歯を矯正中のスーパーの店員(ヒラリー・スワンク)、ハイテンションの店員仲間(ショーン・ハトシー)、ボックスカーのおマヌケ3人組(ベン・フォスター、コリン・ハンクス、スターク・サンズ)、保安官(クラーク・グレッグ)…

と、まあこんな方々が11時14分前後の20分間で織りなすスピーディーな群像劇。

「アクシデントの行方はぜひご自身の目でお確かめください」



…というわけで、
今回は「アフター・アワーズ」からの連想で「一夜の出来事を描いた映画」を2本拾ってみました。

B級でもZ級でもカルトでも、レッテルや評価なんてどうでも良いのですが、埋もれゆく無数の作品の中にもチョッと刺さるものが転がっていたりするものです。…たまにですけどね
パイルD3

パイルD3