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アンディ・ガルシア 沈黙の行方のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

優秀な心理学者のマイケル。彼は息子を自殺で亡くして以来、悲しみから立ち直れずにいた。また、別居中の娘とは距離を置き続け、上手く心を通わせずにいる。そんなある日、マイケルのもとに元教え子のバーバラから仕事の依頼が舞い込んでくる。それは、施設に住む、死んだ息子と同じ年頃の少年トミーのカウンセリングだった…。

アンディ・ガルシア主演のサイコサスペンスであり、ヒューマンドラマの佳作。

主人公マイケルの精神科医の息子はなぜ、息子は自殺してしまったのか?
PTSDを抱えたトミーの過去には何が起こったのか?
なぜ、トミーの母親は父親に殺害されなければならなかったのか?
あるパーティでトミーが殺した(かもしれない)女子校生の殺人事件を追うことで、真実が見えてくるのだが、終盤まで両者の過去に起こった事件の真相は全く分からないミステリー仕立ての脚本が見事。

マイケルが刑務所にいるトミーの父親に会いに行くことで物語は急展開を見せる。
「私と貴方には息子が鬱になった共通点がある…」。
マイケルは友人の心理療法士に息子のカウンセリングを任せていたが、自殺後に発見された息子の遺書には、その心理療法士が息子に性的な悪戯をしていて、誰にも言えずに独りで悩んでいた。
激情した自分は友人の療法士の家に殴り込みに行ったが、家の中の彼はピストル自殺した。これは偶然の違いであって、そうでなければ自分も人を殺していた。

秘密を打ち明けたマイケルにトミーの父親が語りだす。
「あの日、仕事から家に帰ると寝室で妻が男と寝ていた。寝室に男の姿はなかったがクローゼットを開けると、そこにいたのは裸の息子トミーだった。そして怒り狂った自分は妻を殺した」と。

マイケルの息子もトミーも、大人による性的なイタズラが心を病んだ原因。
トミーは近親相姦による被害者である。
父親の殺人現場を見た彼は、母親の支配下から逃れられていないため、青年期になっても父親が許せない、また女性不信から女の子に触れられると混乱を来たす。

殺人容疑の警察の包囲網が迫る中、息子を救えなかった主人公は、命懸けでトミーを守る。
マイケルはトミーを息子に重ねて、トミーはマイケルを父親像を求め、共に失われた時を埋めようする希望的なエンディング。

母子相姦と療法士の子供に対する性的虐待。
サスペンスの手段として、現実の重みがのしかかかる、この手のタブー視される社会問題を取り込む発想も悪くない。
もう少し早く2つの問題をネタバレさせて、トミーとマイケルの心理をもっと描く重厚な人間ドラマにしても良かった。

「墓まで持ってゆく…」
その秘密とは何か?結末の予想もつかず、最後までわからなかった。
残念なのはロケ地や撮影方法が、どうも安っぽくてTVドラマのように見えてしまうことか。
しかし、この作品から「救い」とは何か、「許す」とはどういうことか、真摯に描いた姿勢はとても好感が持てる。
アンディ・ガルシアの深みのある眼差しがとても良い。
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