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アングスト/不安の人間のレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
4.5
久しぶりに再見したので再度レビューを。偏愛映画です。視聴は8回目くらい?
80年代にオーストリアで起きた実際の殺人事件を題材にした映画。
刑務所を仮釈放された”K”が、自身の独白と共に一家惨殺を遂行する。
ただそれだけの内容ですが、不思議と飽きは来ず癖になる魅了があります。

まず斬新なカメラワークが魅力的で、どうやって撮っているのか不思議になるアングルが延々と続きます。
特に他人の家に侵入して殺害を企てている時の、主人公の顔に張り付くように追うカメラはその場の緊張感と主人公の興奮が手に取るように伝わってきます。

次に主人公”K”の行き当たりばったりで情けない姿。
タクシーの運転手を殺害しようとして失敗、逃げ込んだ家では嬉々として”理想的な殺人”を語るも思ったような殺し方はできずグダグダ。この手のサイコパス殺人鬼では珍しい物凄い形相と醜態を晒しての犯行。
思わず頑張れ〜と応援したくなります(もちろん殺人はダメです。)
そしてそんなKを待ち受けるラスト。承認欲求溢れる自分勝手な独白を含め、めちゃくちゃ好きです。

あとは音楽が良いですね。不穏かつスタイリッシュで本作の雰囲気にすごく合っています。
それと登場するダックスフンドが可愛いです。このワンちゃんのキュートさと画面に漂う静寂・血液の対比が良いです。

監督ジェラルド・カーゲルは本作が唯一の監督作だそうですが、非常に才能のある方なのでいろいろ撮ってほしかったですね。

「ザ・バニシング-消失-」「ヘンリー」あたりはシリアルキラー繋がり・雰囲気の近さもあるので、好きな方はハマるのではないでしょうか。
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