がちゃん

稲妻のがちゃんのレビュー・感想・評価

稲妻(1952年製作の映画)
3.9
上映時間87分の小品ながら、
心にしっかりと印象を植え付けてくれる作品です。

この作品で高峰が演じるのは清子。
4人姉弟の末っ子で観光バスのガイドをしている。

この4人の姉弟、すべて父親が違うという複雑な環境のもと、
清子は特に問題を起こすこともなく素直に生きてきた。

二人の姉も悪い人間ではなかったが、次姉の夫が病死するにいたり、
家族をとりまく環境が変わってくる。
夫がかけていた生命保険にまつわる金銭問題だ。

ギスギスしてきた家族関係に嫌気がさし、清子は山の手(世田谷)に下宿することにし、家族と別れて生活するのだが・・・

この主たるストーリーの中に、次姉の夫の隠し子問題や、ぐうたら兄の就職問題、長姉の離婚問題などが絡んでくる。

母親の浦辺粂子はどんなときにも、
「しょうがないじゃないの、そうなっちゃったんだから」が口癖。

この作品の見せ場はラスト近くにやってくる。
次姉の光子が行方不明になったと、清子の下宿に母親が転がり込んでくるのだが、その時の高峰と浦辺の口喧嘩のシーンがすごい。

この作品のいいところを、
このクライマックスで浦辺粂子が全部持って行っちゃった。
神がかりのようなすごい演技。

いつもとぼけたようなところしか知らないものにとっては、
ショッキングといっても差支えない熱演です。

父親がすべて違うことを非難する高峰に対して、「みんな私がおなかを痛めて産んだ子だもの、仕方ないじゃないの」と涙をみせ、「一番いい子だと思ってたお前が一番悪い子だったね、だって母さんを泣かせるんだもの」と。

外は稲妻が走り、
登場人物たちの心情が激しく動くのを象徴している。

行商の声やピアノの旋律など、
生活の音にこだわっている作品でもある。
ディテールが素晴らしい。

当時の銀座の風景も珍しい、
とても味のいい小品です。
がちゃん

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