演出はいいんだけど・・・。
■ 概要
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」と同時上映の特撮短編。
宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」に登場した巨神兵を主役に、ミニチュア特撮技術の粋を集め、巨神兵が東京の街を燃やし尽くすスペクタクルを展開する。
■ あらすじ
『東京に一人で暮らしている女性の「私」のところに、突然弟がやってきて「明日、この街は滅ぶ」と予言めいたことを言い出す。
いつもはそんなことを言わない弟を訝しく思いながらも取り合わない「私」だったが、翌日に突然異形の巨人「巨神兵」たちが東京に現れ、街を焼き尽くしていく。』
■ 感想
◎ 演出
過去日本ではいくつもの破壊を扱った特撮映画がある。
その中でも本作は、トップクラスに綺麗かつ凄みのある破壊を、ミニチュアとデジタル合成に拘り、しっかりと描き切った作品である。
・東宝でよく聞く爆発のSE
・「関山式ビル破壊」の見事なショット
・命を持たないミニチュアを、まるで生きているかのように躍動させる演出
・巨神兵の放つプロトンビームによる大破壊の絵巻(ビルが溶けた所から出る赤いスライムのような描写は、見ているこっちが熱さを感じてしまう。
・火薬で精巧なミニチュアを爆破することに依って、観ているこっちにまで火薬の匂いが漂ってくるようなリアリティのある映像
など、一瞬の瞬きも許されないほどの素晴らしい破壊を堪能することが出来る。
破壊も素晴らしいのだが、何より巨神兵の絶望感や終末観の映し方が見事である。
まず、作品の舞台を現代にした事により妙に生々しくリアリティを持たせることができ(てっきり火の七日間は相当未来の話だと思ってた)、「風の谷のナウシカ」にて巨神兵が核兵器の隠喩として世界を焼き尽くしたといった説得力も生まれる。
そして、突如として東京上空に出現した巨神兵。
まるで巨大な円盤のように空に浮かぶ姿は、何かが空を飛んでいる不気味な上空を見せつけ、ただならぬ絶望感と終末観を表現していた。
それと、映像内で一般家庭のテレビが映るシーンがあるのだが、これもいい感じに味付けになっている。
通常の特撮作品では怪獣が現れた際、一般家庭のテレビ画面でリポーターが怪獣の動作や特徴を解説しているような演出がある。
これはこれで視聴者に怪獣について説明しているといった意味はあるのだろうが、正直リアリティに欠ける。
しかし本作の場合は、そういったリポーターを活用した怪獣の説明など一切なく、ただ平和なリポートから急に画面にノイズが入り画面が切り替わるといった演出がなされている。
正直、こちらのニュースの表現の方がリアリティがあるし、恐怖を終末観を感じることが出来る。
誠に素晴らしい演出なのだが、
・巨神兵の都心上空に浮かんでる際のサイズと、立っている時のサイズが明らかに違う。(立ってる時が滅茶苦茶小さくなってる)
・プロトンビームの不自然な連射(個人的には、なぎ払いのみにして欲しかった)
といった2点のみ、違和感を覚える演出であった。
◎ シナリオ
演出に関しては、一晩中リピート再生しても見飽きないほどの出来であったが、シナリオに関してはクソとしか言いようがない。
完全に中二病のポエムである。
演出面では巨神兵の恐ろしさに寒気を感じたが、こちらは余りの痛さに寒気を感じだ・・・。
何でこんなストーリーにしたんだよ!!!
大体、姉(林原めぐみ)が、
姉(林原めぐみ)「ちゃんと弟の言うことを聞いてれば逃げれたかもしれない・・・。」
とか言って後悔してるけど、世界が滅びるのに何処へ逃げるつもりなんだよ!!!
別に本作に限っては変なストーリーなんか入れなくても、突如として巨神兵が都心上空に現れて破壊をするだけで話として成り立つのに・・・。
何で余計なストーリー入れたんだ??
■ 総括
正直、特撮のチープさを楽しめない人には楽しむことが出来ないかもしれない。
だがそれが受け入れられる人は、一晩中リピート再生しても見飽きない程のクオリティになっている。
特撮の魅力の一つである「本能的に心に何かを訴えてくるリアリティ」を充分に堪能することが出来るので、是非とも特撮好きの人には鑑賞して貰いたい一本である。