チッコーネ

オペラ座の怪人のチッコーネのレビュー・感想・評価

オペラ座の怪人(1998年製作の映画)
4.0
ブタペストのオペラ座でロケを敢行しているようだが、それよりもオペラ座内部に存在するという設定の、おどろおどろしい鍾乳洞場面の印象が強い。
セットでは再現不可能だと思うのだが、これもロケなのだろうか?
その奥深くに設えられた、怪人の居室美術も美しい。
時折挿入されるコメディタッチには、ジャン=ピエール・ジュネあたりの演出を拝借しているような雰囲気も。

何度も映画化されている本作だが、アルジェント・ヴァージョンでは、ヒロインの「愛欲と打算の葛藤」にフォーカシングしている点が個性的。
現代のオペレッタ感覚だと、アーシアのキャラクターは下品過ぎるような気がしていたのだが、クライマックスの激情演技には個性が大いに活かされており、説得力たっぷり。
怪人は醜男ではなく美形という設定で、彼女がその誘惑に身を委ねる場面には、エロティシズムが過剰なほど薫る。
またランボーとヴェルレーヌの痴話喧嘩が挿入される公衆浴場場面など、淫靡なデティールも退廃的で◎。