カラン

カフカの「城」のカランのレビュー・感想・評価

カフカの「城」(1997年製作の映画)
4.0
カフカの城は、決してたどり着かない、のは有名な話。この道程は必ず未完のトルソとなる。原作の小説はノートに書きためたもので未完である。カフカは、未発表の草稿はすべて焼くように言い残して、死んだ。それで、原作が未完であることに言及して、この映画も終わる。こうした原作へのリスペクトの示し方は、原作の愛読者も安心して楽しめる。


☆オープンフレーム

もとはテレビ放映用であるらしい。テレビ画面で心理的なインパクトを高めることを企図したためなのか、ロングショットが少ない。人物は互いにおかしなくらい近く、カメラが接近していることも多く、オープンフレームが多用される。オープンフレームということはフレーム内部の意味作用が完結していないということだし、この映画では常に何かの闖入を予期させる。オープンフレームのシーンを暗転し1秒くらいのポーズで繋ぐ。オーソン・ウェルズの『審判』(1963)は、逆にクローズドのフレームが印象的であった記憶がある。


☆K

『城』の主人公はKという測量技師。『審判』も『失踪者』も未完の遺稿は、主人公はKである。Kはカフカのイニシャルである。カフカというとジャコメッティの彫刻のように厳しい感じの痩身である。本作ではKを演じるのはウルリヒ・ミューエ。『善き人のためのソナタ』のあの人だが、彼は体は細いが、顔が柔和であるので、この映画を観ていてしばらく馴染まなかったが、その内慣れた。劇中で謎の婚約者となるスザンネ・ロターとは実際に結婚した。2人ともすぐに亡くなってしまう。夫は2007年に54歳で、妻は2012年に51歳で死去。


☆ナレーション

前半、ナレーションで『城』のテクストがふんだんに読まれる。ナレーションはオープンフレームと相性がいいかもしれない。が、後半、ナレーションがぐっと減る。ばんばん読んでくれたほうがよかったのだが。



レンタルDVD。55円宅配GEO、20分の18。
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