がちゃん

もっとしなやかに もっとしたたかにのがちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
藤田敏八監督が日活ロマンポルノ時代に撮った作品です。
ただ、そんなに過激ないたずらに性欲を煽る表現はなく、
ポルノものというジャンルに分けてしまうのには抵抗のある作品です。

主演は奥田瑛二・森下愛子。
助演陣に風間杜夫・河原崎長一郎・蟹江敬三・赤座美代子他。
今観ると、相当なメンツが揃っていますね。

この作品には、60年代の熱い時代の燃えカスのような主人公、
奥田瑛二が本当にダメ男を演じる。

奥田瑛二は奥さんに逃げられ、一人息子は実家に預けている。
本人は一人暮らし。
そんな生活の中に家出中の少女森下愛子が転がり込んでくる。

藤田敏八の描き続けてきた若者像を、
森下愛子が演じているが、時が流れたこの時代、
取り残された感がある。
そんな森下愛子を敏八監督は実に愛でながら描いています。

それは主人公を演じる奥田瑛二も同じことで、
奥さんに逃げられ未練たっぷりの生活。
いわば、「青春の敗者」である。

そんな奥田瑛二と対照的に描かれるのが、
ホストを仕事にしている、一見羽振りのいい風間杜夫。
が、そこは敏八作品、幸せのままでは終わらない。

男を振り回して危うい橋を渡るような生き方をしながらも、
力強く生きていく女と、まっとうに平均的な幸せを夢見ながらもあっけなく死んでいく男の対比が素晴らしい作品。

敏八監督は、このあと百恵・友和のアイドル映画を撮ったりします。
一連の敏八ワールドはこの作品が最後だったのかな。
なんだかそんな気がします。
がちゃん

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