スギノイチ

愛と憎しみの伝説のスギノイチのレビュー・感想・評価

愛と憎しみの伝説(1981年製作の映画)
3.0
ジョン・クロフォードを演じるのはフェイ・ダナウェイだ。
メイクから演技から気合入りまくりで、常にピクピクしている。
虐待を扱った映画ではあるが、直接的な暴力をふるうシーンは少ない。
せいぜい、興奮したクロフォードが娘の髪を無理矢理切ってしまうシーンと、ハンガーで娘を叩くシーンぐらいだ。
ハンガーのシーンはアメリカでは語り草になっているほどの恐怖シーンらしいが、やりすぎてコミカルだ。
『刑事物語』の武田鉄也じゃないんだから。
娘が成長して自我を持ち、やがて母親と渡り合うようになると、タイトル通りの愛憎劇的な要素が強くなっていく。

自分の了見の狭さもあるのだろうが、こういう虐待を扱った映画を観る時、海外の作品に対してはどこか別世界の出来事として捉えてしまう。ましてハリウッドスターの内情劇となるとなおさらだ。
この手の映画は邦画の方が真に迫る。古くは『鬼畜』『愛を乞うひと』、最近だと『誰も知らない』『君はいい子』。
見知った世界で描かれるだけに嫌な方向に共感性が高まって、息が詰まるような閉塞感と厭世感があった。
そういう作品に比べると、本作なんかは結構平和的な映画なように思えた。

本作のクロフォードの行為が虐待だったのは確かだが、それに対して娘が母を憎み切っているかというとそうでも無くて、愛憎それぞれ渦巻いた複合的な感情を抱いていることが何度も示されている。
特に、ラストの「あの人らしいわ」という娘の台詞には、大きな失望や諦観と同時に少なくない愛情を感じる。
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