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魅せられてのENDOのレビュー・感想・評価

魅せられて(1949年製作の映画)
4.3
拝金主義と愛の天秤!金による心の桎梏は誰にでもあるだろう。捕らわれの心と身体。貧しい出自から玉の輿に乗るためにマナー・スクールに入学しながらバイトとしてマネキン=コンパニオンとして富豪に見初められるバーバラのシンデレラ・ストーリー…になる訳がない!ストレスによる心身症の発作を持つライアンのモラル・ハラスメントに途方に暮れる。オフュルス印の社交ダンスの回転も場末のジャズクラブでは密度が高く決して優雅ではないが長回しによる愛の告白を促す起点となる。対して豪邸でメイスンとライアンが対峙するミニバー越しの90°の位置関係。手前に映るバーカウンターにいるライアンの大きな背中と奥の壁を背に遠くからカメラを見つめるメイスンの視線。カメラ広い空間における距離感がそのまま心の断絶や空虚さに繋がる感覚。メイスンと電気シェーバーで髭を剃る産婦人科医の会話は秘書室のデスクを中心に開いた2つのドア枠にそれぞれ寄り掛かる姿を宙吊りのカメラでパンをしつつ切り返す。つまり蛇行しながらも妊娠という核心には触れない。元ボーイ長の執事が奏でるピアノと診察室で耳をつんざく子供の笛はどちらも不快感を煽る上に持続するので観客の心を逆撫でする。横転し破損したピンボールに挟まれ息も絶え絶えなライアンを無視して部屋を出る演出が素晴らしい!大好きなニューロティック・ロマンスでした。
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