ねぇ素晴らしい

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魅せられて(1949年製作の映画)
4.2
なんかもう話が全く入ってこない(『三つ数えろ』みたいに筋が追えなくなるわけじゃなく動機の動きが、というか)のをはじめとして映画に期待する体験をかなり与えてくれる。シャスタを獰猛なキャピタリズムに対抗しうる唯一固有の瑕疵としたときの、『インヒアレントヴァイス』では語るに留まっていたウルフマンとの対峙の様子が本作ではまじまじとみられる。『ハウスオブグッチ』が今年いちばんの勢いで偏愛映画ルートにのっている理由がここでつながった気がする。父と子とオフュルスの御名において!
なんでフィルムノワールのBOXに入っているんだろうと思ったけど最後までみたら間違いなくそうだった。弱くて、倫理的にあやしくて、公平なあいまいさ。「踊る?」「踊るの下手だよ」「やめる?」「踊ろう」「どうする?」「踊らないの?」「踊ろうか」のところで確信したのは、やはり本物っぽい会話じゃなくてもっともらしい嘘のダイアローグ(ちょうど『JR』みたいな)が好きなんだということ。「アグアはないよ」的な選択は『ノーカントリー』につながる。