菩薩

魅せられての菩薩のレビュー・感想・評価

魅せられて(1949年製作の映画)
4.2
ジャケがエッチじゃない方の『魅せられて』。オフュルスの映画による女性解放運動。社会に当たり前に「玉の輿に乗る事が最も幸福な選択である」と刷り込まれた女性と、全てにおいて自分が一番で無くては気が済まず、ひたすらに負けず嫌いな精神年齢6歳の大富豪との結婚。そもそも旦那側の結婚の動機が精神科医をギャフンと言わせたいとのまるで理由にならないものであり、当然夫婦生活は破綻どころかそもそも存在しておらず、開始20分で新婦のメンタル共々崩壊する。監獄の様な豪邸を飛び出し外の世界に活路を見出す妻、叩き込まれた精神性をボロクソに叩かれながもなんとか独り立ちし、職場で素敵な男性とも巡り合うが…離婚が成立していないクソ旦那は、彼女に更なる試練を与え、再度監禁を始める。序盤からかなり男尊女卑な描写が続くが、流石は女性映画の名手オフュルスとあって、露骨に男性社会に対してNO!を突き付けていく。代名詞とも言える流麗なカメラワークはここでも抜群に冴え渡り、これまた代名詞とも言えるダンスホールから物語は更に加速を始め階段での攻防へと繋がっていく。ラストはかなり思い切った落とし方をしてくるが、彼女がふと溢す笑顔こそが苦悩からの解放を意味しているのだろう。ある種の復讐劇とも言える苛烈さ、ミンクのコートすら脱ぎ捨てる彼女の未来を思う。
菩薩

菩薩