チッコーネ

魅せられてのチッコーネのレビュー・感想・評価

魅せられて(1949年製作の映画)
4.2
愛情に飢えたままミリオンドラーになってしまった男が引き起こすSM型愛憎劇で、個人的にはゾクゾクするほど好み!
偏屈ぶりの描写が特に興味深く『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のプロトタイプ的作品とも呼べそうだ(こんな風にしか相手を愛せない男って、セクシーだなぁ…、とか思ってしまう私は、マゾ)。

また物事の本質へ向かおうともがく、健気なヒロインが出てくる映画を、久しぶりに観た気がする。
女性の自立をめぐるストラグルもまた、本作の重要なテーマとなっているのだ。
現代の世の中であっても、レオノラのように泥水を飲む覚悟がある女性がいれば、こちらも大いに支持したいところである(まぁ、ほとんどいないけど)。

90分弱という短いランニングタイムで、ラストがあっけなさ過ぎるのは残念。
問題児の旦那があのまま退くとは思えないし、あと30~40分、もうひと山あればもっと強力な映画になった気がする。

『ロリータ』のジェイムズ・メイソンが出てくるノワールがあったとは、嬉しい発見。