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天才マックスの世界のcyphのレビュー・感想・評価

天才マックスの世界(1998年製作の映画)
4.7
「わりとよかったんで暇だな〜ってときに観てください」って2年前にこのDVD貸してくれた友だちの優しさに溺れて死にそうありがとう ウェスアンダーソンってやっぱり初期作の方が感情を直接揺さぶりにきて大好きなんだけど!?音楽の使い方、思春期の窮屈さとそれを逆説的に表現する気持ちのいいフィクショナルな無敵感 恋愛のままならなさも人生のままならなさも少年の作劇とハッピーエンドの魔法が救ってくれる その強烈な信仰心 ままならなさをここまで執拗に繰り返し丁寧に描く青春映画もあったかしら マックスの多動っぷりがそれをけして悲劇にしないところもポップで破茶滅茶でありがとう 水族館の無意味な天丼よ 童貞恋愛モノでここまで心を寄せながら観れた映画も初めてかも つらいね、えらいね、ありがとうね

『大人は判ってくれない』のジャンピエールレオとしての本作のジェイソン・シュワルツマンの有り様もエモい 監督の幼年期の身代わりとしてデビューしその後も常連俳優として依代を務め続ける一役者 ビル・マーレイも本作の彼の悲しげな瞳がいちばん好きかも 彼がおそらく戦場で(あるいはそれ以前の人生において)負った傷自体はけして描かれず、病院のエレベーターで酒を煽りたばこを2本吸いする姿をただ見せるのもいい マックスの傷つきについてもそう 彼が不屈の精神を見せつけるほどにそれでもなお覆いきれない母の不在のやり切れなさは強調されるがそれはけしてテーマたり得ない 演劇そのものをあっさりと省略しながら演劇の成功による大団円で有無を言わさないその腕力プレイもうれしい すべてを完璧な箱庭にできるとまだ信じ切れていない、迷いと勝気さの入り混じった萌芽としての初期作にこそ彼の類稀なさを見たい もう一回観てから返します まじでありがとう
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