明石です

マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴の明石ですのレビュー・感想・評価

4.2
巨匠2人が競作形式で作品を出し合う2本立ての中編映画集マスターズ·オブ·ホラー。今作はダリオ·アルジェント×ジョージAロメロというまさかの『ゾンビ』コンビで、完全に作り手に興味を惹かれて観た。「エドガー·アラン·ポーの小説をモチーフに映画を作りたい」というダリオからの打診で始まった企画とのこと。

前編の『ヴァルドマー氏の〜』は、遺産目当てで結婚した老いぼれの夫を催眠術にかけて殺し、大金をせしめようとする若い妻と間男の話。生きた人間の醜い貪欲さを背景に、彼らへの恨みから生き返る死者という、人怖×ゾンビのテーマが滅茶苦茶ロメロっぽくて好き笑。後編は、ポーの『黒猫』を主軸に、『落とし穴と振り子』や『アッシャー街』など、ポー作品をごった煮にしてアルジェント流の過剰さで味付けした猟奇的な殺人映画でした。ポーの小説の幻想的なモチーフが2人の、とりわけアルジェントの想像力を刺激したのか、TV映画という枠を超えた力作になってる。

こうして競作形式で見てみると、改めて、ロメロは「静謐」の映画作家で、アルジェントはある種の「過剰さ」を売りにしていることがわかる(その点、この2人がタッグを組んだ『ゾンビ』は奇跡の化学反応を起こしましたね)。たとえばジャケットに映ってる口を広げたグロテスクなビジュアルイメージも作中(後編)にほんの少し顔を覗かせるだけで、ストーリーにはほとんど影響しない。こういうシーンを嬉々として盛り込むアルジェントと、「ゾンビ」という非現実の要素以外は徹底してリアリズムを貫くロメロ、2人の姿勢がくっきりと対照をなしているのもとても面白い。

トム·サヴィーニの特殊メイクはやはり素晴らしかった、、監督ロメロが「トムの仕事の中で最高のもの」と語る、のちに生き返ってゾンビ化する、ヴァルドマー氏の凍った遺体が特に◎。CGなど一切使われてないのに、死体にしか見えない笑。それから振り子に切り裂かれ、胴体が真っ二つになった女性の全裸死体に、機械仕掛けの猫まで特殊メイクで仕上げたようで、改めて、この人には何でも作れるのだなあと感動した。
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