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ベルリン陥落 1945のeのレビュー・感想・評価

ベルリン陥落 1945(2008年製作の映画)
3.7
これまたB級戦争アクションなDVDジャケットですが内容は全然違います。言うなれば「ヒトラー 最期の12日間」のその後の物語。原作は、終戦後に出版されたある匿名ドイツ人女性の日記だそうです。

「ヒトラー 最期の12日間」では終盤にベルリン陥落に沸く赤軍兵士たちが描写されていましたが、彼らがその後何を行ったのか。占領軍の常として、戦場をくぐり抜けてきた若く健康な兵士たちは、占領地の女性をレイプしていきます。ベルリンでは女性の1割近くが、赤軍が通った”解放地”やドイツ全土も含めれば、200万人の女性が赤軍の性的な暴行に晒されたとも言われているそうです。当たり前ですが赤軍は極悪非道なナチスを打ち破った正義の軍隊ではありません。

映画で赤軍兵士たちは次々に女性を強姦していき、主人公の女性は自分たちを守る術として階級の高い兵士のパトロンになることにより、これ以上の暴行を防ごうとします。秩序が半ば崩壊した時に現れる人間の本性や行動、そうした中での人間関係。ドイツでは敗戦時の赤軍兵士による大量レイプについては半ばタブー視されてきたそうで、原作の日記が1950年代に出版された際も日記の著者は”ドイツ人女性の恥”と非難されたそうです。現代よりずっと性に関して保守的な時代、しかし、彼女たちを恥だと罵るのならば、暴行を受ける前に死ねばよかったとでも言うのでしょうか?敗戦と屈辱と陵辱の中でも、主人公たちはなんとか強く生き延びていきます。実際、ある兵士の”お気に入り”になる事により、引き換えに食べ物を持ってきてもらったりなどという事も多かったそうです。

しかしながら、内容が内容だけに娯楽性に乏しく、史実故に悪い奴が報いを受けたりラストはハッピーになるようなカタルシスもなく、間違ってもいい気分になるような映画ではないため、この辺の歴史にどうしても興味がある人か、戦争というものの現実の一片を知りたい人以外は、はっきりいって観る事はオススメできないです。

日本もソ連の侵攻により敗戦前後に満州でベルリンと同じような目に合わされており、暴行を恐れた看護婦たちが手榴弾で集団自決するような悲劇もあったそうです。スターリンは占領地の女性は「戦利品」としてある程度兵士たちが自由にすることを半ば黙認していたという事です。そうした事実に怒りも覚えますが、しかし日本も戦時中は南京を始め中国やフィリピンで女性への暴行を繰り返しており、また、従軍慰安婦の問題などもありながら、そういった事実を認めようとしない態度をとる人間も大勢います。ソ連が赤軍の暴行を認めなかった態度が非難されるように、日本人のそういった態度も、世界からは非難されるでしょう。
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