この作品は、ヒッチコック監督初のトーキー。
当初、サイレントとして作られたのをトーキーとして作り直したということです。
全体として、セリフが少ないですが、
その少ないセリフがサスペンスを盛り上げてます。
もちろん、映像で魅せるヒッチコック話術はこの頃から健在です。
襲われそうになり、ナイフで男を刺殺したヒロインと、
それをかばおうとする恋人の刑事。
そして、すべてを知っていてそれをネタに刑事をゆすろうとする前科者の男。
三人の心理サスペンスです。
片方なくした手袋が、この作品の大きなキーポイントになっているんですが、今、気づきました。
デ・パルマの「殺しのドレス」の手袋をなくしてしまうシーンは、
この作品へのオマージュだったんですね。
そう考えると。この作品のヒロインが、ナンシー・アレンに似ているような気がします。
殺人を犯してしまったヒロインの不安定な精神状態を、街のネオンサインで表現したり、（カクテルをシェイクしているネオンサインがナイフに変わる）「ナイフ」というセリフの連呼で、より不安をかきたてたり、
見事だなあと、うなってしまいます。
そして、実に後味の悪いエンディングを迎えるわけですが、その時のヒロインの精神状態を、破れた不気味な絵と嘲笑にも聞こえる笑い声でこちら側にも伝染させてくれます。
途中、ちょっと混乱があるので、
上出来とはいいかねますが、
それでもやっぱり面白い。
オススメ！！
