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空軍/エア・フォースのryosukeのレビュー・感想・評価

空軍/エア・フォース(1943年製作の映画)
3.8
ホークスによる1943年の戦意高揚映画。「リメンバー・パールハーバー」的な台詞を聞くこともできる。ラストには「戦争に勝つことが真の結末だ」みたいなこの種のプロパガンダ映画お決まりのメッセージが出てくるが、終盤の圧巻の戦闘描写の畳み掛けの後だとさぞ効いたことだろう。日本人観客としてはカタコトのアジア人にはずっこけてしまうが、この時代に日本語ネイティブなんて出せないか。ミスター・モトって誰のことだと思ったけど小説の登場人物なのか。
ジェームズ・ウォン・ハウによる陰影豊かな撮影が光る。混乱する基地における、飛行機、自動車、人物が画面手前から奥までひしめき合っているショットが印象的。ホークスのフェティッシュなのであろう飛行機もかっこ良く捉えられている。
前半の機上での会話シーンは淡々としすぎている嫌いはある。まあ延々狭い機内にカメラが設置されていることで観客も共に搭乗しているようなリアリティがあるともいえるか。
陸海空を舞台に繰り広げられる戦闘シーンはどれも大迫力。特に地上から戦闘機を迎え撃つシーンは凄いな。プロパガンダ映画ゆえの軍の全面協力のおかげなのだろうか。修理した機体で離陸するシーンのプロペラが回るのか回らないのかのサスペンスの具合も絶妙。
全体の構成としては若干単調ではあるかな。前半部はひたすら機内での会話が繰り広げられ、後半は戦闘描写の羅列のようになっている部分もあるので、一本のドラマとしての纏まりには欠ける印象はある。
ホワイトが息子の訃報を告げられるシーンは、遂に息子に会えると思って嬉しそうな顔をするのが切ない。「二十年生きてこれだけでは虚しすぎる」というセリフは重たいな...
赤狩りの犠牲になり早逝したジョン・ガーフィールドは今回も影のある役を好演。ニヒルな表情が印象に残る。
クインキャノンを看取るシーンの「地上でのフライト」は実に素敵。低音の劇伴も心なしかエンジン音に聞こえてくる。会話劇の中で彼が「天に昇っていく」ことを表現する。
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