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SOMEWHEREのappleraichのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
3.5
『Aftersun』がとてつもなく好きなので、関連作品として鑑賞しました。
表面的には似てますが、深みは全く違いますね。

セレブ感たっぷりでフェラーリ乗ったり、あちこちの女に乗ったり、何をやっても空虚な前半、打ってかわって娘との交流は何をやっても心が満たされる後半。

本当にこんな満たされないセレブはいるのだろうか。一般人のやっかみではないのか。でも、ソフィア・コッポラさんはどちらかと言うとセレブ側の立場ではないの?
ソフィア・コッポラさんはご存知、フランシス・コッポラの娘さんですが、これまでほとんど観てませんでした。映画『地獄の黙示録』撮影時は家族でフィリピンに来て、父の苦悩や苦労を見てきたと聞いています。

さて、人の心を本当に満たすものは何か。
似たようなシチュエーションを最近経験しています。
リアル世界で妻が入院したのです。
いきなり、息子とサシで過ごす生活が始まりした。
何かと苦労しながら息子も段々と事態が飲み込めてきて、彼なりに協力し始めてくれました。
そのうち祖母が引き取ってくれることになったのですが、別れる直前は何となく僕と息子が『クレイマー、クレイマー』みたいな雰囲気でした(笑)

監督は人に必要な感情の根元的な問いかけをテーマにしつつ、淡々と描かれる時間により切なさを倍増させます。
後半、娘と離れてからというもの、腑抜けとなり、プールの上にマットで木の葉のように漂うと、いつの間にか画面から見切れてしまいます。観客からも見放されてしまう主人公。
パスタを茹でれば分量が分からず超大盛りなのも自分の経験と重ね合わせると全く見てられない痛ましい映像です。
ただ、それもユーモアとまでは行かないのが悔やまれます。そして、セレブを描いているけども、セレブはセレブでそれなりに頭を働かせて何とか生活を充実させるのではないでしょうか。
つまり、「セレブがこうあって欲しい」という一般人の願望をうまく取り込んだ幻想だと思うんで、セレブじゃなくても物語は成立しましすね。

映画は(わざと)退屈で長いですけど、これはもしかすると物質主義を鼻で笑った『ファイトクラブ』の女性監督版ではないでしょうか、というのが僕の結論です。

間違ってるかもしれません(笑)
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