スギノイチ

傷だらけの山河のスギノイチのレビュー・感想・評価

傷だらけの山河(1964年製作の映画)
3.5
『白い巨塔』の田宮二郎、『戦争と人間』の滝沢修、『華麗なる一族』の佐分利信、『金環蝕』の宇野重吉、『皇帝のいない八月』の渡瀬恒彦。
山本薩夫作品では、監督本人のイデオロギーとは正反対の悪役こそ怪物性を帯びて魅力的に映る。
この映画の山村聡は上記より前の作品だが、その決定版みたいな人物だ。

上記の悪役達は権威主義・資本主義・軍国主義等に溺れる一方で、何らかのコンプレックスが丸出しになっていたりするのだが、この映画の山村聡にはそういった部分が無く、悪びれもせず屈託なく突き進む。
劇中で指摘されている通り、もはや狂人に見える。
山本薩夫はこの山村聡の内面の無さを自省して、以降の作品ではコンプレックスを露骨に出すタイプの巨悪を登場させたのかもしれない。
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