Kana

華麗なるギャツビーのKanaのレビュー・感想・評価

華麗なるギャツビー(2013年製作の映画)
3.0
煌びやかな世界に生きる1人の男の、小さくて壮大な野望の物語。

あの淡白な不思議物語をどう映像化するのかと興味がありつつも、デカプリオを使ってただのエンタメにしちゃうのかとガッカリして避けていたら、これが…なかなかにとてもよかった。
原作とは違う視点から描くことで、それぞれのキャラクターに息吹が吹き込まれた。
幻想と現実と嘘と真実と希望と絶望が混じり合う世界に、奥行きと臨場感が加えられ、胸を熱くさせた。
デカプリオも、めっちゃ良かったなぁ。
渇いた心と、冷めた目と、その奥に光る野望。
原作よりも魅力的に見えたし、彼がなぜあそこまでデイジーに惹かれたのかも理解できる気がした。
何も持たず、手探りで多くのものを掴み取ってきたまっすぐな男が、少年のような心で夢に見た理想の女神…それがたまたまデイジーであっただけで、もしかしたら相手は別のお嬢様でも良かったのかもしれない。
ギャツビーは多くの人に夢を見せてきたけど、1番夢の中に生きていた男だった。

1922年、第一次世界大戦を終え、ヨーロッパを抜いて経済的トップに躍り出たアメリカ、狂騒の20年代と言われた時代のニューヨーク。
次々に建ち並ぶ高層ビルは摩天楼と呼ばれ、ウォール街は活気に沸き、密造酒は人を惑わせ、煌びやかな世界に目をくらませる人々。
色鮮やかな舞台と、そこに生きる人々の苦々しさに想像力を掻き立てられる。

エンディングも良かったなぁ。
哀愁というのか…うまく言葉にできないけど、光と闇とそこに群がる愚かさを映しているようで。

村上春樹の愛読書ということで、結構昔に原作を読んだことがあります。
全部は覚えてないけど、わりと淡々と進んで、物語が突然展開して、起承転結というよりはギャツビーの熱情と異常なほどの執着をいかに描くか?という話だったと思うんですよね。
あまり感情移入はできず、感動とかではないけど、ちょっと現実とファンタジーの混ざり合ったグリム童話みたいというか、村上春樹が好むのも納得な本なのです。
映画とは違うけど、興味のある人はぜひ。
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