ぽち

夜ごとの美女のぽちのレビュー・感想・評価

夜ごとの美女(1952年製作の映画)
3.5
夢の混沌無形でシュールな世界と、下町人情の現代のバランスが素晴らしく、モノクロでチープな映像にもかかわらず楽しめる作品。
さすがルネ監督と納得してしまう。

悪夢に戻らないように睡魔と戦うとか、甘い夢が徐々に悪夢に変わるとか、ちょっと間違えると怖さの方が前面に出てしまう所を、全編軽いタッチで暗い不安感を一切感じさせないのは匠の技と言えよう。

夢のシーンのバックの書き割りや手抜きともとれるいい加減なシーンなども、シュールな雰囲気を作り出し一切マイナスになっていない。

そして次から次に出てくる美女たちも作品の楽しさの一つ。
みんな個性があり綺麗で見とれてしまうが、今作ではロロが大活躍。当時としてはたぶん思い切った大胆なシーンと思える、後ろ姿ヌードを披露しているのは見所だろう。

時代を超えて楽しめるコメディ。



余談。
ラスト近くでジェラールが処刑される前に恋人と話している内容が深い。
「20世紀にはみんなが安心して自由に暮らせる世界があるのだろうか」と言うような内容。

実はこれを突き詰めていくと立派なSFとなる。
で、それを書いたのが小松左京。

原始時代に体力尽きて死にゆく一人の老人が夢を見る短編小説。
今作のようなコメディではなくハードでシリアスな深い小説。

でも、ルネ監督も小松も描いたビジョンは一緒だったのだろう。
ぽち

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