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クロエのRiNのレビュー・感想・評価

クロエ(2001年製作の映画)
3.1
『花が咲いたら、あたし、死んじゃう?』

ボリス・ヴィアンによるファンタジー青春小説「うたかたの日々(日々の泡)」は、よほど世界のクリエイターの心をくすぐると見えます、フランスで二度、そして日本では今作と、三度の映画化の機会に恵まれています。特に有名なのはミシェル・ゴンドリー監督による「ムード・インディゴ」でしょうか。
その幻想的な筆致に日本にもファンも多く、またとりようによっては悲劇的とも言える耽美な作風が特徴です。

肺に浮かぶ小さな蕾。それは次第に成長していき、宿り主のクロエは次第に衰弱していく。その花の成長は、現実世界の花と触れると遅れることを知ったクロエの夫高太郎は、二人の部屋を花で満たし、懸命にクロエの看病を続ける、というストーリー。

うたかたの日々の序文にこうあります。
「この世で2つだけ存在し続けるものは何か? それは可愛らしい少女と一緒にいて感じるような愛、そして、ニューオーリンズとデューク・エリントンの音楽だけである。それ以外のものは全て消え去るべきである。ただ、ただ醜いだけなのだから……」
…この文章、わかります?わたし正直さっぱりでした。だからかなあ、この作品の映画化はどれもさっぱり入ってこないんですわ。

今作も、その美しさに不快になるってことはなかったんですけどね、美しいだけの物に興味が持てない悲しい性を繰り返し実感してしまうだけでした。
美しさは言うことないし、映像は古めかしさは拭えないですが、その詩的な台詞もそこまで浮き立つことなく馴染んでいて、演出の妙は感じ入りました。だけど、それだけ。

恋に愛に酔いしれる感覚が、いまいち掴めないのは寂しいなあ。
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