"打ち上げ花火 下から見るか?横から見るか?"で、ガツーンとやられ、"スワロウテイル"で もひとつガツーンとやられ、"love letter"、"ラストレター"で岩井俊二は、私の中で不動の監督となった。
人を選ぶ作品だとは思う。
愛を描いているけれど、ちょっと歪んでて
一歩も二歩も間違ってるから、ホラーっぽくもある。
1994年秋にレイトショーで一週間限定公開のような形で公開されると、銀座界隈が騒然となるくらいすごい反響だったらしい。
ずっと気になりながら観れていなかったが、先日"愛していると言ってくれ"の再放送を観て以来、またまたトヨエツにズキューンとなってしまった私。。
気がつけば、手に取っていた。
映像は、もう間違いなく綺麗。
トヨエツも山口智子も、若いけどやっぱり存在感は抜群だし、二人とも美しいから画になるのなんの。。
でも、それだけではなく余白のある作品で、色々考えさせられた。
登場人物は三人だけ。
夫婦?恋人?(どちらかでニュアンスが若干変わってくる気もするけど、劇中でそのことに言及するシーンがあったのだろうか?)精神科医(田口トモロヲ)が"彼女"と言っていたのでたぶん、恋人。奥さんなら"奥さん"て言うよね。
二人の関係が何とも言えず、不確かな感じではある。
気持ちって見えないから、確かめたくなる。
カメと歯の矯正器具。
それだけを取っても、どこかズレてる感じは否めない。
萌実(山口智子)は寂しかったんだろう。
犬が飼える所に引越ししようって由紀夫(豊川悦司)が言って、それで犬が飼えたら良かったのかな?違うよね。
恋愛って、改めて難しいな。
私は、どちらかだけがしんどいのはダメで、fifty-fiftyの関係が良いなと思っているけれど、この二人を見ていると一見普通のようで、何か不自然。
自分が無さすぎる女とちゃんと与えない男と。
だから、病むんだよね。
気持ちを伝え合うって、そしてお互いが同じくらい好きって大事なんじゃないかなぁ。
病院の帰り、モノトーンの服に身を包んだ二人の、電線までロープのように見えてくる、計算し尽くされたキスシーン。
駆け出す子どもたちの制服もまたモノトーン。ため息が出るほど美しく、そして切ない。
これは、岩井監督にしか撮れないな。。
「ちゃんと縛ってよ」
何度も繰り返す萌実。何を?…
何故、由紀夫は聞かないのだろう?
体じゃなくて心を、だったのか。
「待ってるを縛ってた」
待ってる時間って見えないから、形にしたらこうなんだよって萌実は言いたかったんだね。
憔悴していく由紀夫。
画面に緊張感が走る。。
男と女の間には、暗くて深い溝がある。
その通り!
何を求めてるかわからないと、一緒にいるのが苦しくなるよね。
undo→ほどく
縛って、ほどいて。
萌実は何を縛りたかったんだろう?
求めれば求めるほど、遠ざかっていく。
ロープに支配されたアトリエが、狂おしいほどに美しく、そして虚しい。。
シンプルな音楽にまた、余韻を感じる。
あったかいトヨエツに会えると思ったら、ちょっと違った笑
でも、観てよかった。。