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あれからのchiyoのレビュー・感想・評価

あれから(2012年製作の映画)
3.5
2021/3/7
2011年3月11日、東日本大震災の夜。主人公・祥子が勤める東京郊外の靴屋の風景は、あの惨事の後とは思えないくらいの日常。が、彼女と常連客との会話、どことなく張り詰めたような空気が、何かが違うことを感じさせる。そして、祥子の恋人・正志が被災地に暮らしていること、その彼が東京を去った理由が徐々に明らかに。今の祥子と正志の関係は、不安定な上に物理的な距離もあり、恐らく居ても居なくてもあまり変わらない。それでも、非常時には相手のことが思い浮かぶし、ましてや第三者から諭される謂れもない。二人の今後がどちらに転ぶかは分からないけれど、自分で靴紐を結び、前を見据えて歩き出そうとする祥子の表情が印象的。また、青空に隠された傷跡は、晴れた空の下で露わになる被災地、痛みを堪える祥子と被災者の心を見ているかのようだった。
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