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ポワゾンのtakのレビュー・感想・評価

ポワゾン(2001年製作の映画)
2.8
ウィリアム・アイリッシュの「暗闇へのワルツ」をハリウッドがどう料理するのか、フランソワ・トリュフォー監督版(「暗くなるまでこの恋を」)とはどう違うのか。まぁ興味はいろいろあったのだけど、トリュフォー版の方が僕は好き。

というのは、トリュフォー版は、女にさんざんな目に遭わされながらもそれでも愛を貫こうとする、ジャン・ポール・ベルモントの狂気にも似た愛情ってのが後半の中心。それ故「何でこんな女に!」と観客はとまどいもするけれど、その女がカトリーヌ・ドヌーブだけに、どこか心の底では愛してくれているのかも、とかきっとベルモントの思いは通ずるに違いないという実に淡い期待が観客にはあった。登場人物の感情がドラマの中心だったのだ。一方ハリウッド版は、後半は観客の期待を裏切るようなストーリー展開に終始して、愛と裏切りのサスペンスドラマというエンターテイメントに徹している。トリュフォー版を観ている観客にはエッ?という裏切りがあり、そこはハリウッドらしくて面白いところだ。

クライマックスで真実を知ったアントニオ・バンデラスの表情には、怒りの感情があった。しかし、ベルモントなら”こんなろくでもねぇ女愛しちまった。しょうがねぇよな。でも俺はあいつを心底愛してるんだ”というあきらめや自嘲の表情を見せたに違いない。そう思うのだ。確かにあの場面のアンジェリーナ・ジョリーは見事だ。「トゥームレイダー」では絶対に見せない、感情がこみあげる表情はこの映画で印象に残るところのひとつだろう。

でもねー、アンジェリーナ・ジョリーがヒロインだけに、もう出てきた瞬間に”あ、こいつ何かやらかすな”という先入観を観客はどうしても抱かざるを得まい。「美人の花嫁でゴメンね。」とか言われちゃっても”こいつ美貌を鼻にかけたヤツ”としか思えなかった。同じ「他人の写真を送ったの。」という台詞でも、ドヌーブは本当に自分に自信がないからだろう、と納得させられる(騙される)けど、ジョリーは”最初から企んでたの”と言わんばかり。割れた唇には笑みさえ漂ってるではないか!。話題の官能シーンは、久々に見応えありました。
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