Yui

魔女と呼ばれた少女のYuiのレビュー・感想・評価

魔女と呼ばれた少女(2012年製作の映画)
3.6
14歳で子供を宿したコモナが、静かなフランス語でお腹の子に語りかける。12歳から現在までのコモナの想像を絶する体験が時間を遡って一人称で語られる、アフリカの少年兵をテーマにした作品。

反政府軍に捕まり、両親を銃殺しろと命じられ、出来ないなら両親をナタでなぶり殺すと脅され、そんな状況で両親も「お前は生きろ」と死を覚悟する。そして彼女は兵士にさせられます。まだほんの子供なのに、どう生きるかではなく、生き延びるために生きている現実はフィクションではなく、多くの子供達がさせられていることだそうで…辛すぎて言葉が見つからない。そんな冒頭から、コモナの過酷な戦渦を生きる様子が映されて行く。

やがてどんな戦いをも生き延びる彼女は魔女と呼ばれるようになり、アルビノの男の子マジシャンと恋に落ちるのだけど、途中でアルビノの村に寄るシーンがある。アルビノが先天性のメラニン欠乏による遺伝子疾患だという事は知られているが、アフリカの一部の地域では、アルビノの体に神秘な力が宿ると伝統的に信じられており、頭や肢体を刈り焼いて祈祷するという大量虐殺の惨劇が続いているため、今でも武装兵で保護されたアルビノの村が存在するのだという…。

知らないことだらけで衝撃でした。
こんな状況下で生きていられることが不思議というか、私だったら死にたくなると思ったけど、もはや平和慣れしている私たちとは「生きる」ことの概念が違うんだろう。安堵出来る一瞬しかない幸せのシーンが際立ちすぎて、それが切なくて…苦しいのなんの。

10年間の構想を経て2011年、紛争が続くコンゴ民主共和国でのオールロケをしたという事からも、監督の思いの丈を感じる事が出来ます。

前情報入れずに観るよりは、あらすじなど読んでから観るのがオススメ。ネタバレ読んだ方がより理解して観れる気がしますし、それでも作品として楽しめるタイプの映画です。

エンドロールで流れる曲の中、子供達の楽しそうな笑い声にも涙が溢れます。

2021-384
Yui

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