NAOKI

凶悪のNAOKIのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
3.8
優れた映画監督には二つのタイプがあると思います。

ひとつはどんなジャンルだろうがどんな規模であろうがそのニーズに応じて水準以上の作品を作り続ける…いわゆる職人監督…

もうひとつは強固な作家性を持ち、一貫した作品を撮り続け一定のファンを獲得するタイプの作家型監督…

白石和彌監督は後者ではないかと思っているわけです…
「凶悪」
「日本で一番悪い奴ら」
この二作を観たとき、リドリー・スコットやスコセッシを彷彿とさせる作家型のとんでもない監督が現れた!と興奮しました。

特にこの「凶悪」は強烈で…おれはあまりのインパクトにここで高評価の近作「彼女がその名を知らない鳥たち」や「弧狼の血」がまったく物足りなかったくらいです。

この「凶悪」…いきなりピエール瀧扮するヤクザ「純次さん」の鬼畜の所業から始まるのですが、その極悪さは凄まじく白石監督…長編第一作目の「覚悟」のようなものが感じられておれは感動すら覚えました。

そしてこれだけが「凶悪」なのではなく…雑誌記者の山田孝之の取材から浮かび上がってくる本当の「凶悪」…

現在の山田記者がたどり着いた一軒の家を覗きこむ…その家で過去「先生」によって行われた凶行が浮かび上がる…その場で覗いているかのような…過去と現在がはじめて接点を持った瞬間を実に映画的に見せたこのシーンは白眉です…震えました…

このあと「純次さん」と「先生」の初めての共同作業…焼却炉に死体を入れようとして…
「思ったより奥行きがないんだな…」
「もう固くなっちゃってる?」

何かに麻痺した二人ののんきな掛け合いが心底恐ろしい…

ピエール瀧は小学生の娘がいる家で愛人を抱くシーンで…
「子供のいる場所でそういう撮影はまずいのでは?」と監督に申し出てスタッフと色々苦心をして撮影を行ったという裏話を聞きました。

常識良識のある大人たちが真剣に非常識なシーンを撮るからこそ恐ろしくも面白い映画が出来上がるわけです。

「ぶっこんじゃお…」

この先もこの作家性を追及していくだろう…白石和彌という監督は日本映画をひっくり返すような傑作を撮ってくれるのではないか…と密かに確信しています😁💦
NAOKI

NAOKI