てつこてつ

3人のアンヌのてつこてつのレビュー・感想・評価

3人のアンヌ(2012年製作の映画)
3.5
ホン・サンス監督は、ゴダールやロメールに例えられる事も多く、カンヌ国際映画祭にも何度も招聘、また受賞した経歴もあってか、フランス映画界とはやはり相性がいい。

だから本作ではフランスの大女優イザベル・ユペールを一人三役という形で主演に迎え、台詞の8割が英語という異色作ながらも違和感がなく、非常にしっくりと来る出来映えで、監督の作品群の中でも個人的には上位に入ると思う。

イザベル・ユペールがとにかく年齢を感じさせずに可愛らしい。落ち着いた大人の女性の気だるさを見せたかと思えば、まるで少女のようなはつらつとした笑顔を見せたりと、とにかく魅力的。「ピアニスト」「ELLE」とは全く違う素顔に近い魅力が良く出てる。ホン・サンス監督作品のヒロインでは、キム・ミニと並ぶくらいしっくりと来る。

三人のアンヌのオムニバスエピソードを結ぶキーパーソンの役割を担うライフガードを演じたユ・ジュンサンが、これまたいい味を出している。

「小さなライトハウス(灯台)」を巡っての、それぞれのアンヌとライフガードの会話が引き起こすデジャブ効果による独特のユーモアや、3番目のアンヌと僧侶の禅問答のようなやり取りが楽しい。

ホン・サンスと言えば、唐突なズームアップが印象的だが、この作品では珍しく意味がある箇所でこのテクニックが使用されており、また、ストーリー性もしっかりしているので、良い意味でホン・サンス監督らしくない収まり方。

ラストシーンのスタスタと歩き去るイザベル・ユペールのピンと背筋が張った後ろ姿が美しく印象的。
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