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ビッグ・ピクチャーのakrutmのレビュー・感想・評価

ビッグ・ピクチャー(2010年製作の映画)
4.1
妻と不倫していた隣人を思いがけず殺してしまったエリート男性の苦悩と描いた、エリック・ラルティゴ監督のサスペンス映画。米国の小説家ダグラス・ケネディの小説『ビッグ・ピクチャー』が原作であるが、物語の舞台が米国からフランスに翻案されている。主役のエリート弁護士ポール役としてフランスを代表する俳優のロマン・デュリス、その妻役に監督の実生活でのパートナーであるマリーナ・フォイス、弁護士事務所の共同経営者にカトリーヌ・ドヌーヴが出演している。

妻から離婚を切り出されたエリート弁護士のポールは、不意なことから妻が隣人の写真家と不倫していることを知ってしまう。その写真家と喧嘩となり、その最中に偶然彼を殺してしまったポールは、彼の死体を始末するとともに、その写真家になりすまして逃亡を試みる。このように進んでいく前半はまさに逃亡劇というサスペンス的な内容である(出だしがちょっと長いように思うが、それでもハラハラさせられる展開である)が、逃亡先のセルビアでは逃亡劇だけではなく、ポール自身のキャリアに関する大きな出来事が起こる。実は、ポールも弁護士になる前は写真家となるという夢があったのである。キャリアとしての成功や幸せとは何かを考えさせられるとともに、それを素直に享受できないポールの皮肉な境遇が、アドリア海の美しい風景や魅力的なセルビア女性とのロマンスと対比的に描かれていて、とても印象に残る。ポールと恋に落ちるセルビア新聞社の編集長イヴァナを演じるブランカ・カティッチがとても魅力的。セルビアは美人が多い。

Filmarksのレビューを見るとあまり評価が高くないようであるが、個人的には、逃亡劇のサスペンス的な焦燥感と人生の皮肉という人間ドラマが効果的に融合していて、高評価を付けたい。ロマン・デュリスのファンではなくても、一度見て損はない良質の映画である。
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