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エンディングノートのTSのレビュー・感想・評価

エンディングノート(2011年製作の映画)
4.0
【迫り来る死】85点
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監督:砂田麻美
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:90分
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 つい先々週に祖父を亡くした身なので余計に響きました。祖父は心不全でして、最期1週間はまともに会話できなかったのですが、今作の砂田智昭さんは胃がんの宣告を受け、そこから死までの自分の行動を綴っていくというものですから、「死の準備」ができていました。とは言え、死の宣告なんてどんな人でも受け入れ難い。今作はその辛い悲しい出来事を彼の娘が撮り残していくという感動ドキュメンタリーです。

 サラリーマン一筋で化学会社に勤めていた砂田さんは無事に退職をして第二の人生を歩もうとしていましたが、間もなく癌がみつかり余命あと僅かという宣告を受けてしまいます。現代の医療技術においても、癌に効く薬や治療法が明確になくて、末期がんだともうどうしようもない状態。今作に映っていないところでもちろん砂田さんは慌てたでしょうしパニックになったと思われますが、作中においては極めて冷静でして、自分の死までの行動を綴るエンディングノートなるものを作成していきます。自分の葬式はどうするか、死ぬまでに何をするか、などのto doリストを作っていくのです。

 こんな冗談でもない出来事をよく最期まで撮影できたものです。感服したといいますか、普通ならば辛すぎてカメラを回せないでしょう。でも、最期までドキュメンタリーとして撮ることが父への感謝の意を示すのならば、誰にも真似できない素晴らしい行為だったと思われます。刻一刻と迫る死を前に砂田さんがとっていく落ち着いた行動。こんなの、見ていて涙が出ないわけがない。徐々に痩せ細っていくが最期まで元気な砂田さん。しかし、どんな人にも死には勝てない。最期はあっけないものです。死とは何かなんてよく言いますが永遠にわからないテーマでしょう。

同じ境遇の人がいたら辛すぎて見れないかもしれませんが、良い意味で評価することすら烏滸がましい、人の終わりを普通に撮ったある意味唯一無二の作品だと思われます。改めてご冥福をお祈りします。

 
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