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檻囚のnetfilmsのレビュー・感想・評価

檻囚(1962年製作の映画)
3.8
 半裸の男は何かに駆り立てられるように鉄扉をノックするが、その重い扉はビクともしない。男の冷たい視線の先には、半裸で体操し続ける2人組の男がいるのだが、もしかしたら男の眼と体操する男の2人のショットは厳密にはカット・バックしていないかもしれない。果たして脈絡もないショットとショットは繋がっているのだろうか?凄まじいモンタージュを放つ寺山修司の処女短篇となる今作は、時の回廊の真ん中に幽閉された男が叫ぶともなく、昏睡し倒れる。金歯を不気味に光らせる老婆はニタニタと笑いながら、ゆっくりと円環運動を繰り返し、ミスター日本はスクワットの上下動をループし続ける。後に写真家となった立木義浩は自らがカメラの後ろに立つばかりか、役者としてもフレームの中に溶け込みながら、吸い込まれるような白い身体をした山羊をグルグルと追いかけ続けるのだ。寺山修司はフランス・アヴァンギャルドに憧れながら、役者たちの怠惰な動きに執着する。無機質な肉体の動きに呼応するようなJ.A.シーザーの底なし沼のような調べ、荒野に置かれた白い便器、そして投げ出された振り子時計は正確な時の刻みを拒否するかのように近代化に抗うのだ。その無機質で殺風景な日本の風景に土着的だった過去の我が国の姿が滲む。
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